
「パン屋のリアリティーはパンの中に存在するのであって、小麦粉の中にあるわけではない。」
——村上春樹『回転木馬のデッドヒート』
本展はこの言葉を手がかりに、パンと小麦粉の関係を、私たちの自己と世界との関係として読み替える試みで
す。小麦粉は潜在的には平等ですが、混ぜられ、発酵し、焼かれてパンになった瞬間、比較され、選ばれ、格差を帯びます。そこに社会的なリアリティが付与されます。私たちもまた、社会に姿を現したときから、そうした不均等な価値の中に置かれていきます。しかしその背後では、普段は見えず見逃されてきた細部が息づき、独りでいるときの誰にも見られていない時間が流れ、身体は環境や他者の圧力の中で静かに自己を修正し続けています。三人の作家は、それぞれの方法で、こうした「かたちになる前/なりつつある状態」に目を向け、その揺らぎや摩擦を作品として差し出しています。本展は、完成されたパンとしての自己だけでなく、その背後にある流動的で不安定な存在のあり方を通して、私たちがどのように社会の中で位置づけられ、生きているのかを問い直す場です。
[展示情報]
▪会期:2026年1月14日(水) – 1月19日(月)
▪会場:GALLERY33 (A)
▪開館時間:11:00 – 19:00 (初日12時30分から/最終日17時まで)
▪住所:東京都杉並区高円寺北2-8-5
▪作家プロフィール
senn (セン)
2024 多摩美術大学大学院 造形研究科油絵専攻 入学 在学中
2024 FACE2025大展 入選
2024 第23回「アートギャラリーホーム」入選
WANG JINGXUAN (オウ ケイセン)
2003 中国生まれ
2026 武蔵野美術大学造形学部油絵学科油絵専攻 在学中
MIAO YUTONG (ビュウ ウトウ)
1998 中国生まれ
2024 多摩美術大学大学院 造形研究科油絵専攻 入学 在学中
