
それは、鼠の空想の世界から始まった。
NYに暮らしていた頃、地下鉄やレストラン、大学、アパートの周辺など、人間の住む場所のあらゆる隙間で鼠の姿が見られた。とりわけ地下鉄では、穴から現れては消える彼らの動きが印象に残った。そこには、人間の営みとは異なるリズムと時間が流れているように感じられた。
版画は、版に刻まれた痕跡を反復し、転写する技法である。削られ、残され、そして刷られる。
その過程で図柄は静かに立ち現れる。
鼠のかじる行為もまた、時間や物質に小さな欠損を刻む。その痕跡は確かに存在するが、ひっそりと、見過ごされる。
本展は、人間の住む場所の下に潜む存在と、版に刻まれる傷や欠落とを重ねる。刷り重ねられる図柄は、「かじられた時間」の断片として、どこかに残る気配となる。
[展示情報]
▪会期:2026年3月19日(木) – 3月24日(火)
▪会場:GALLERY33 (A)
▪開館時間:11:00 – 19:00 (初日16時から/最終日16時半まで)
▪住所:東京都杉並区高円寺北2-8-5
▪作家プロフィール
Nobuko Misawa (Printmaker)
Pratt Institute MFA Printmaking 修了
