
今回の個展では、我々が初めて「コロナ禍」というものを経験した2020年5月から描き始めた「点描画」を展示する。「点描画」は、19世紀フランスの画家、ジョルジュ・スーラが創始した技法である。彼は屋外の光を表現する印象派の系譜に連なる画家であるが、スーラが彼らと異なるのは「屋内のアトリエ」で制作した点である。点描は厳密な科学理論に基づいて色の点を画面に配置していくもので、「屋内にいながら、科学的アプローチによって屋外の光を表現する」技法である。自室にこもることを強いられ、窓からの光をぼんやりと眺めていたコロナ禍中の私は、このとんでもなく時間のかかるスーラの技法を使うことにした。
さて、この展示は緊急事態宣言下での東京オリンピックに合わせて開催することになる。絵画のテーマ自体もそれにまつわるものが多い。展示タイトルの「backstreet」とは、その祭典の「裏路地」であり、今の日本現代美術の潮流の「裏路地」という意味でもある。「表通り」の喧騒に飽きたら、是非「裏路地」に立ち寄ってもらいたい。そこには思いもよらない「黄金」が眠っているかも知れない。
笹田晋平
1984 大阪府生まれ
2007 神戸大学 発達科学部 卒業
2018 第21回岡本太郎現代芸術賞入選展(川崎市岡本太郎美術館)
2018 個展「I will neglect nothing」(Ohshima fine art)
2018 個展「dance in the palace」(CRISPY Egg Gallery)
2020 第23回岡本太郎現代芸術賞入選展(川崎市岡本太郎美術館)
2020「Fire of Argus」(CRISPY Egg Gallery)