
玉川宗則と笹田晋平の2人による展示「うぇあとぅしーまとふじ」
2人はともに立川市の富士見町にアトリエを構える作家です。徒歩数分圏内に互いの家があるため、よく一緒に散歩をしたりアトリエを互いに行き来し、作品について語り合っています。
昨今の2人の制作に共通するテーマは「日本美術」です。とは言っても、現代美術界隈でイメージされるような、アニメや漫画などを意識的に作品に取り入れているスタンスではなく、少し距離を置いて日本美術を捉えているようです。
いえ、かしこまった表現はなしにしましょう。要するにテキトーなのです。真面目に研究しているわけではないのです。自分の表現の手の届く所にそれが転がっていたので拾ってみた、ような感じでしょうか。
玉川は、もともとバスキアらのニューペインティングやグラフィティアートから影響を受けていました。しかし昨今、玉川は密教の両界曼荼羅や禅画などを自身の表現に取り入れています。曼荼羅に登場する様々な仏たちや、仙崖や白隠らのいわゆるアウトサイダー達の描く自由闊達な水墨表現は、実は彼の持つ作家としての気質と相性がよいのです。
特に彼の描く「線」には、非凡な力が宿っています。
笹田は以前からシャケ涅槃図などの日本美術を作品に取り入れてきましたが、最近の彼はどういうわけか「点描画」にハマっているのです。
点描は、新印象派ジョルジュ・スーラが生み出した光を科学的に捉える技法です。
しかし、笹田の描く極端に縦長の画面に佇むゼラニウムや烏、公園で孤独に鎮座するゴミ袋からは、鈴木春信や小村雪岱らに通じる意匠を感じとることができます。
このように、2人は全国に無数に存在すると言われる「富士見町」の高台から「富士山を遠望する」かのように日本美術を捉えます。
日本美術からの影響をコンセプトとして大仰に掲げるつもりは彼らにはないでしょう。
今日は何を食べ、何処へ散歩に行こうか、なんて話をしながら、2人は今日も絵を作り続けています。