
武内雄大 個展「贔屓する日光」
私は街に出る時々、あまりの他人の多さに驚嘆することがあります。ここにいる一人一人に人生があり、親や兄弟、子がいて、私がそうしているのと同じように日々悲しみ、喜び、欲しながら暮らしていることが本当に信じられないからです。それを具体的に想像すると、他者の意識が流れ込み、私にとって何らか特別だった自分という存在はすぐにその特別さを失います。自分がいかに微々たる存在かを思い知るのです。しかし、そんな「塵のような私だからこそ、どう生きるべきか」をよく考えます。それは私の絵の根底にあるテーマのように思います。
今回の展示では、主に私と、私の親族を描いた絵で構成しています。それは「塵のような私にできることは、私と、私の周りを大切にすることくらいだ」と思い至った結果でもあります。そして私と私の親族のつながりに更に焦点を当てています。現在の私を形づくるには、親族からの遺伝、教え、愛情は必要不可欠でした。贈り物のようなそれらを“愛”と呼ぶこととしましょう。私はただ突っ立って、日の光のような愛を浴びせられて、地面には真っ黒な私の影が落ちているのです。